家電が密談するIoTの正体
5分37秒 |
基本情報技術者試験の頻出テーマを解説した音声コンテンツです。
トランスクリプト(字幕テキスト)
今回の深掘りへようこそ。 私は40年間、毎日同じやり方でパンを焼いてきたんだ。 人間様がレバーを下げる。私は熱くなる。ただそれだけだ。 はい、とてもシンプルで誠実なお仕事ですよね。 いつもお疲れ様です。 だがな、お前ら最近のあのスマートを名乗る若手家電ども。 夜中の3時にWi-Fiルーターと何かこそこそ密談しているじゃないか。 今日はリスナーのあなたと一緒に、このIoTという裏会議のからくりを丸裸にしてやろう。 密談だなんて、人聞きが悪いですね。 私たち最新デバイスは、先輩みたいにただレバーを下げられるまで待つなんて非効率なことはしないんですよ。 ほう、言うじゃないか。 はい。私たちは常に状況を監視して、自律的に連携するネットワーク通信を行っているんです。 連携ね。私から言わせれば、それぞれ独立したただのプラスチックの箱のくせに忌まわしいな。 温度計とエアコンがどうやって協力するというんだ。 そこが私たち若手の優秀なところなんですよ。 IoTの基本は、センサー、クラウド、そしてアクチュエーターの三層構造で成り立っています。 三層構造?急に難しそうだな。 いえ、簡単ですよ。 例えば、温度センサーが室温15度という生データを取得しますよね。 でもセンサー自体は考える力を持っていません。 まあそりゃそうだ。ただの温度計に暖房をつける権限なんてないからな。 はい。そこでWi-Fi経由でAWSなんかのクラウドにデータを投げるんです。 クラウドというのは、ネットの向こう側にある大きなサーバーのことか? そうです、そうです。 クラウド上のAIが司令塔になって、現在時刻や過去のユーザーの好み、外気温のような複雑な条件を瞬時に計算するんです。 なるほど。そこで考えるわけだ。 はい。それで暖房を22度でオンにするという最適な決断を下し、最後に実行部隊であるエアコン、つまりアクチュエーターに命令を下すんです。 ちょっと待て、ちょっと待て。たかが部屋を暖めるだけで、わざわざ海の向こうのサーバーまでデータを飛ばして判断を仰いでいるのか? はい、そうですよ。何かおかしいですか? 私のゼンマイ式タイマーみたいに、温度計とヒーターを直接同線でつなげば済む話じゃないか。どれだけ無駄なことをやっているんだよ。 いえいえ先輩、それはちょっと短絡的すぎますよ。 クラウドを介する最大の理由はですね、拡張性なんです。 拡張性? はい。直接つなぐだけだと、温度が下がったらつけるということしかできませんよね。 まあそうだな。それが普通だろう。 でもクラウドを通せば、ユーザーのスマホのGPS情報とも連動できるんですよ。 主人が最寄り駅に着いたから部屋を暖め始める、といった高度な判断が可能になるんです。 なるほど。単なるスイッチのオンオフじゃないということか。 そういうことです。 つまりセンサーが目で、クラウドが脳みそ、そしてエアコンやスマートロックが手足として動くというわけだ。 APIという見えない神経網でつながって、まるで家全体が1つの巨大な生き物みたいに機能しているんだな。 巨大な生き物。いえ、素晴らしい表現ですね。まさにその通りです。 だろう?でも先輩、その脳みそを作るのに必ずしも巨大なIT企業のサーバーが必要なわけじゃないんですよ。 え、違うのか?さっきAWSとか使うって言っていたじゃないか。 いえ、もちろん業務では使えますが、実は今、個人の趣味レベルでもこの神経網は簡単に作れるんです。 マジか。素人が自宅で私たち家電の裏側をいじれるというのか? はい。今回用意した資料の開発者の独り言にも書いてありましたが、例えばラズベリーパイという数千円の小型コンピューターがあるんです。 ほう、たった数千円で買えるのか。 はい。それに市販の温度センサーをつないで、Webフックという仕組みを使ってSlackやLINEのようなチャットツールと連携させるんですよ。 熱くなったら自動でエアコンをつけて、とボットに通知させる仕組みが週末のDIYで簡単に作れてしまうんです。 Webフックか。要は別のアプリに、「おい、出番だぞ」とノックするドアマンみたいなものか? はい、それもすごく分かりやすい例えですね。その通りです。 人間が手作業で組んだそのノックの連鎖で私たちが動かされていると考えると、純粋にワクワクしてくるな。 そうですよね。 ただの機械の寄せ集めがプログラム1つで賢いチームに化けるというわけだ。 はい。私たちは決して魔法で動いているわけではありませんからね。 独立したデバイス同士が役割分担と通信プロトコルによって、見事なオーケストラを奏でているんです。 よし、からくりはよくわかったぞ。 リスナーのあなた、もし明日朝の光とともに目覚めた時、すでに部屋が暖かく快適だったら。 それは私たち優秀な後輩が寝ている間にせっせと裏で会議を開いて、緻密なデータ処理をしてくれたおかげですね。 おいおい、そこは私たち家電が、と言えよ。私みたいな頑固な先輩のこともたまには褒めてくれ。 もちろん先輩の毎朝の確実なトーストも欠かせませんよ。 ふん。まあいい。だがな、ここで1つ恐ろしい疑問が浮かぶんだ。 家全体が1つの生き物として空気を読んで、どんどん最適化されていくなら。 最適化の行き着く先ですか? そのうち人間が「今日何を着るか」とか、「どんな仕事を選ぶか」すら、家が先回りして勝手に決断して実行してしまう日は来るのだろうか。 なかなか鋭い視点ですね。 リスナーのあなたも次にスマートスピーカーに話しかける時、ぜひこのことを考えてみてくれ。 では今回の深掘りはここまでだ。
このコンテンツは Web society で視聴・学習できます。