プロジェクトの健康診断_EVMの基本と活用術
16分07秒 | PMコストFE
基本情報技術者試験の頻出テーマを解説した音声コンテンツです。
トランスクリプト(字幕テキスト)
もし、あなたが100万円のプロジェクトを任されていて、今ちょうど半分、50万円を使い終わったとします。 さて、このプロジェクト、順調だと思いますか? なるほど。いきなり、ちょっと意地悪な質問から入りますね。 多分、多くの人は、「まあ予算の半分使ったんだから、作業も半分くらい終わっていれば順調でしょ」って考えますよね。 でも、現実はそう単純じゃない。 そうなんですよ。僕も、直感的にはそう思っちゃうんですけど、 今日、あなたが共有してくれた資料を読んで、ハッとしました。 重要なのって、いくら使ったかじゃなくて、そのお金で、どれだけの価値を生み出せたかなんですよね。 ええ。だから、もし50万円使った時点で、全体の作業が、そうですね、 20%しか終わってなかったとしたら。わあ、それはもう、大事故ですね。 残りの予算50万円で、全体の80%もの作業をやりきらないといけない。 ですよね。単純計算でも、あと150万円は追加で必要になるっていう。考えるだけで、ちょっと冷や汗が出ます。 本当ですよね。この、なんか、言葉にしづらいヤバさの感覚とか、 逆に「おっ、思ったより進んでるぞ」みたいな手応えを、誰もが納得する客観的な数字で視覚化する、 それが今回のテーマ、EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)なんですね。 ええ、その通りです。EVMの目的を、一言で言うと、感覚的な進捗報告から脱却しましょう、ということです。 ああ、なるほど。お金の進捗と作業の進捗、この本来は別々の物差しで測ってたものを1つに統合して、 プロジェクトの健康状態を診断する。未来を予測するための、 言ってみれば「航海レーダー」みたいなものだと考えてもらうと分かりやすいかもしれません。 航海レーダー。いい例えですね。ただ進んだ距離を見るだけじゃなくて、 このままのペースで進んだらどこに着くのか、途中に氷山はないか。そこまで見通すと。まさに。 じゃあ、そのレーダーの仕組みを早速、分解していきましょうか。 EVMを理解するには、まず、基本となる3つの指標があるんですよね? はい。この3つがすべての土台になりますね。まず1つ目がPV(プランド・バリュー)、計画価値です。 これはシンプルに、プロジェクトを始める前に立てた、 現時点までにこれくらいの作業を終えて、これくらいのお金を使ってるはずだ、というあの計画そのものです。 あー、なるほど。プロジェクト計画書にある、あの理想のスケジュール曲線みたいなイメージですね。これは分かりやすい。 で、次に2つ目がAC(アクチュアル・コスト)、実コストですね。これも言葉の通り、 現時点までに実際に支払ったお金の総額。まあ、経理に聞けば分かる、現実の支出額です。 なるほど。PVが計画、ACが現実の出費。ここまではまあ、普通のプロジェクト管理でも見てる数字な気が。 そうなんです。ここまではそうですね。問題はここからです。 3つ目にしてEVMの心臓部とも言えるのが、EV(アーンド・バリュー)。EV? ええ。アーンド・バリューとか出来高なんて訳されます。これが少し、ややこしいんですが、 現時点までに完了した作業を、元々の予算に基づいて金額に換算した価値を指します。 ちょっと待ってください。完了した作業を金額に換算する。そこが少し抽象的でピンとこないんですけど、どういうことでしょう? いい質問ですね。例えば、100万円の予算で10個の機能を作るプロジェクトがあったとします。 で、計画上、各機能の価値は均等に10万円だとしましょう。はい。 で、今日までに5個の機能が完成した。もしそのために70万円使ってしまっていたとしても、 つまりACが70万だとしても、あなたが稼いだ価値、EVは5機能分の50万円、ということになるんです。 あー、そういうことか。使ったお金がいくらありありと関係なく、成し遂げた仕事をあくまで当初の計画の価値に当てはめて計算するわけですね。 その通りです。AC、実コストが70万円でも、EV、稼いだ価値は50万円。 なるほど。ここで初めて、使ったお金と生み出した価値が別物なんだっていうことが腑に落ちました。 まさにそこが核心で、そして、このPV、AC、EVという3つの数字は、単体で見てもあまり意味がないんです。ほう。 計画(PV)と稼いだ価値(EV)を比べることで、スケジュールの進捗が分かる。そして実際に使ったお金(AC)と、 稼いだ価値(EV)を比べることで、コストの効率が分かる。 この比較によって初めて、プロジェクトの立体的な姿が見えてくる、というわけです。 なるほど。じゃあ、その比較をすることで具体的に何が分かるんですか? 例えば、「このプロジェクト、もう赤字ですよ」みたいな、かなり厳しい宣告もできてしまう。 できます。それも非常に明確に、誰にも言い訳させない形で突きつけることができる。それが次に紹介する効率指数です。 特にビジネスの現場で重要になるのがCPI(コスト効率指数)ですね。CPI。コスト・パフォーマンス・インデックス。 はい。計算式はシンプルで、CPI=EV÷AC。つまり、稼いだ価値を実際に使ったお金で割るだけ。 EV÷AC。ということは、さっきの例で言うと、稼いだ価値50万円を、使ったお金70万円で割るから、CPIは約0.71ですね。 この0.71っていう数字が一体、何を物語ってるんですか? それは、あなたがこのプロジェクトに1円投入するごとに、71銭の価値しか生み出せていませんよという、まあ、極めて厳しい現実です。 うわー。もしCPIが1ならトントン。1を上回っていれば黒字ペース。そして1を下回った瞬間、そのプロジェクトは赤字であることが確定します。 確定ですか。それは厳しい。でもこれって、マネジャーが「いや、今は先行投資の段階でして」とか、「終盤で巻き返せますから」 みたいな言い訳を封じ込める効果がありそうですね。数字は嘘をつかないぞと。まさに。 それがEVMが強力であると同時に、まあ一部でちょっと嫌がられる理由でもあるんです。でもこれは、誰かを非難するためのツールじゃない。 ええ。むしろ早期に警報を鳴らしてくれることで、手遅れになる前に対策を打つためのものなんですね。 CPIが0.7だって分かれば、「このままでは最終的に予算が3割近くオーバーするぞ、どうする?」っていう、建設的な議論を始められるわけです。 なるほど。コストがCPIなら、スケジュールの方も同じような指数があるんですか?ええ、あります。SPI(スケジュール効率指数)です。 計算式はSPI=EV÷PV。稼いだ価値を計画していた価値で割ります。 これも同じで、1未満なら計画より遅れている、つまり、スケジュール遅延を示しますね。 ふむふむ。でも、ここで疑問が湧くんですけど、例えば、SPIが悪化してスケジュールが遅れたとしますよね。 そうするとチームはそれを、取り戻そうと必死で残業するじゃないですか。まあそうなりますよね。 すると、遅れは取り戻せてSPIは1に近づくかもしれないけど、今度は残業代がかさんでACが増えて、CPIが悪化する。 これって、どっちを優先すべきなんでしょうか?いや、素晴らしい指摘ですね。それこそがプロジェクト管理のジレンマであり、 EVMが浮き彫りにする重要な問いなんです。納期が絶対なのか、予算が絶対なのか。 SPIとCPIのどっちを重視するかは、そのプロジェクトの制約条件によって変わってきます。 EVMは答えそのものはくれません。でもそのトレードオフの関係を明確に数字で見せてくれる。 だからこそ、経営層を巻き込んだ意思決定がしやすくなるんですよ。 いやー面白いな。理論はよく分かりました。でも正直に言うと、こんな計算を毎日やるのは結構大変そうです。 現場ではこの知識をどうやって活用してるんでしょうか?資料にもいくつかヒントがありましたよね。 ええ。理論だけでは宝の持ち腐れですからね。最も実践的ですぐにでも導入できるのが、グラフによる可視化です。 あー、数字の羅列じゃなくて、絵で見せるわけですね。その通りです。 多くのプロジェクトでは、ポータルサイトみたいな場所で進捗を共有しますよね。そこにPV、AC、EVの3本の線を引いた、 あのS字カーブのグラフを乗せるんです。はっ、ああはいはい。よく見ます。あのカーブですね。 ええ。そのグラフに、もうシンプルなルールを書き加えるだけなんです。青いEVの線が赤にACの線より下にあったら、そこは赤字ゾーンです、とか。 青いEVの線が、黒い計画線PVより下にあったら、そこは遅延ゾーンですというように。 なるほど。それなら、数式が苦手な人でも、パッと見て「あ、今ちょっと赤字ゾーンに入ってるな」とか、 「遅延はしてるけど、コストは計画内に収まってるな」とか、状況が一目で分かりますね。 そうなんです。さらに言うと、このグラフはチームの士気にも影響するんですよ。 自分たちの頑張りでEVの線がグッと上向いていくのが見えると、自分たちの仕事が価値を生んでるんだという実感につながる。 確かに。モチベーションになりますね。逆もそれで、問題が起きている時も、「EV線が今AC線の下にあります。何をすべきか考えましょう」と、 個人攻撃ではなくて問題解決に向けた会話を始めやすくなるんです。 「なんで赤字なんだ」って怒られるより、「どうすればこの線を上に持っていけるか」って考える方が、ずっと前向きですもんね。 資料の2つ目のヒントは、少し毛色が変わって、「試験問題の攻略法」でした。これも興味深かったです。 ここで面白いのは、EVMが単なる現状分析ツールじゃなくて、未来予測ツールにもなるという点なんですね。 試験では、「現在のCPIがこのまま続いた場合、最終的な総コストの見積もりEACはいくらになるか」なんて問題が出るそうです。 EACは完成時総コスト予測。はい。一見するとどうやって計算するんだって戸惑いそうですけど、実は魔法のような公式があるんです。 それがEAC=全体の総予算÷現在のCPIです。え、そんなにシンプルなんですか? 全体の予算が1000万円で、今のCPIが0.8だとしたら、1000万円を0.8で割るから、答えは1250万円。 その通りです。つまり、このままの非効率なペースで進むと、最終的に250万円の赤字になる、と。御名答です。 もちろん「このままのペースなら」っていう仮定の上ですけど、絶大ですよね。公式を知ってるだけで、試験問題を素早く解けるのはもちろん、 実務でも「今のやり方を続けた場合、我々は250万円の損失を出すことになります」と、非常に説得力のある提言が可能になるんです。 それは強力ですね。ただ予測するだけじゃなくて、行動を変えるための武器になる。そして3つ目のヒント、「現場の教訓」でした。 数字の裏側にある人間の、そして組織の話ですね。はい。 「残業代でコストは増え、疲労で出来高は下がる。するとCPIは一気に悪化する」。この一文に悲劇が凝縮されてる気がします。 まさにプロジェクト管理の真理を突いてますね。遅れを取り戻そうとして、チームが無理な残業を重ねる。 まず、残業代や手当でAC、実コストが目に見えて膨れ上がりますよね。はい。 CPIの計算式の分母が大きくなるわけです。でもそれだけじゃないんですよね? ええ。もっと恐ろしいのは、分子であるEVへの影響なんです。疲労が蓄積すれば、当然集中力は落ちるし、ミスが増える。 コミュニケーションも雑になって、手戻りが発生する。結果として質とスピードが落ちて、稼げる価値がどんどん下がっていく。 分母は増えるのに分子は減る。そうなると、CPIはもう、坂道を転げ落ちるように悪化していくしかない。 これをもうちょっと大きな視点で捉えると、EVMの奥深さが見えてきます。単なるツールの操作じゃない、ということです。 チームの健康状態、モチベーションといった一見すると定性的な要因が、CPIというハードな指標に直接反映される。 抽象的な数式と、生々しい現場が繋がる瞬間なんです。 深いですね。つまりEVMって、チームが無理をしていないか、持続可能なペースで働けているかの健康診断にもなるわけですね。 おっしゃる通りです。CPIの悪化というサインを見つけたら、マネジャーは怒るんじゃなくて、「チームに無理をさせていないか」って自問すべきだと。 おっしゃる通りですね。その問いの答えが無理な残業だとしたら、組織の働き方そのものを見直すべきだという、 経営レベルの課題を突きつけているのかもしれない。だからこそ、多くの組織でEVMが重要視されているわけです。 単なる手法だと思ってましたけど、組織論にまで繋がる、人間的なツールなんですね。では、今回の話をまとめていきましょうか。 EVMはプロジェクトの健康診断であり、航海のレーダーであると。特に覚えておくべきは3つの指標。 計画であるPV、実際のコストAC、そして最も重要な稼いだ価値であるEV。それらを関係性の中で見ること。それが重要でしたね。 はい。そしてコスト効率を見るための指数CPI、計算式はEV÷AC。この値が1を下回っていたら、赤字のサイン。 このシンプルなルールだけでも、明日からのプロジェクトの見方がガラッと変わる気がします。 そして最後に、EVMの本質は成績表じゃないということを改めて強調しておきたいです。これはより良い航路へと導くためのレーダーなんですね。 判断の基準を、常に使ったお金じゃなくて、稼いだ価値、バリューに置くこと。その視点の転換こそが最も重要なことなのかもしれません。 価値を基準に判断する。テーマですね。そこで1つ、問いがあります。 今回の資料では、残業と疲労がCPIを悪化させる大きな要因として挙げられていました。これは非常に分かりやすい例です。 では、あなたの仕事において、表には直接現れないけれど、実はEVを静かにしかし確実に蝕んでいる隠れた要因とは何でしょうか? 隠れた要因、ですか?ええ。例えばコミュニケーション不足による頻繁な手戻り、あるいは目的が曖昧なまま開かれる長いだけの会議、 何重にも渡る承認プロセスによる待ち時間、そういったものって、確実にチームの生産性、つまりEVを生み出す力を削いでいきます。 確かに。手遅れになるまで気づかれない。あなたのチームのボトルネックはどこにあるのか。少し立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。
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